都心居住実態調査報告書(要約版

 

 財団法人 都市化研究公室

都心居住研究会

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1.アンケート調査の実施目的等

1)アンケート調査の実施目的

全国の市部(政令市を除く)における都心居住の実態を明らかにするとともに、自治体における都心居住関連施策の実施状況、推進課題等を調査し、もって都心居住のあり方の検討並びに政策立案等の参考に資する。

2)調査対象・実施時期

全国664市(政令指定都市を除く全市)のまちづくり推進担当課宛、平成15年7月に実施。

3)回答率

アンケート発送件数664件に対して、回収407件、有効回答406件、有効回答率61.1%

 

2.調査結果の概要

1)全国の市部における都心居住傾向について

全回答406市のうち、218市(54%)において市内に「都心」と捉えている場所がある。都心の定義は、中心市街地活性化基本計画における中心市街地、DID地区、都市機能の集積地などであり、その平均的な規模は、200ha、全市面積の1%前後、人口1万人程度である。

このうち57市(全回答の14%)において都心居住の傾向がみられるとともに、65市(同16%)においては近い将来都心居住の傾向が表れる可能性があるとされている。

また、人口規模別にみると、都心居住傾向が最も顕著に表れているのは30〜40万人規模の市であり、その47%が都心居住傾向ありとしている。

 

2)都心居住の傾向が表れた時期 (都心居住傾向のみられる57市について)

都心居住傾向が表れ始めた時期は、バブル崩壊(1990年)以降、特に2000年前後以降からであり、この傾向は大規模都市では強く表れている。

 

3)都心の世帯規模

都心における世帯規模は、大規模都市で平均2.49人/世帯、小規模都市で平均2.27人/世帯と大規模都市で細分化されている。

 

 

4)都心の高齢者世帯比率

都心における高齢者世帯比率は、大規模都市で平均18.2%に対して小規模都市で平均21.1%。特に小規模都市では高齢者世帯比率30%以上が3割近くに達するなど比率の高さが特徴である。

5)都心の住居形態

都心における住居形態は、従来戸建て住宅が多かったが、最近では中高層マンションが圧倒的に多い。この傾向は大規模都市で特に強く表れている。

 

6)都心居住世帯

最近の都心居住世帯として目立つのは、「働き盛り夫婦と子供」及び「高齢者の夫婦のみ」の世帯である。

 

7)都心居住の背景

自治体では、都心居住が進むのは、地価の下落やまとまった住宅・宅地の開発が増え住居が購入しやすくなったことに加え、都心における生活利便性の高さが評価されたためとみている。都市規模別には大規模都市で地価下落が都心居住の大きな要因になっていることが示されている。

 

8)自治体の都心居住への見方

また、9割近くの自治体において、都心居住の進展を望ましいとみているが、都心部における都市基盤不足や郊外部における活力低下等の懸念から、都心居住傾向を望ましくないとする自治体も1割強存在する。

 

9)都心居住の課題

都心居住の推進課題としては、マンション建設が進むこと等に伴なう都市基盤の不足や景観の悪化、コミュニティの形成しにくさ等が挙げられている。単に都心部のみにとどまらず、都市部全体の計画を見直していく必要性の指摘もある。

 

10)都心居住に係る支援策・規制

3割弱の自治体では都心居住推進に係る支援策や規制を設けており、具体的には借り上げ市営住宅制度や市営住宅の建設といった直接事業や、優良建築物等整備事業への補助制度などのインセンティブ制度、指導要綱による都市環境の確保などの規制が実施されている。

 

11)都心居住施策に係る国・県への要望

国・県への要望としては、都心居住推進事業者への税制優遇とともに、事業費補助、無利子融資、家賃補助等に対する支援、景観形成誘導にかかる権限の付与、国・県営住宅の建設等が挙げられた。

 

12)自由意見

都心居住の現状・課題、あり方、具体的施策等に関する意見が寄せられた。

『当市においては、都市基盤の整備の遅れ、防災上の課題があり、また地価の高騰などによる人口流出がある。住環境整備や都市景観を向上させ、中心市街地の全体としての魅力を高め、都心に再び人を呼び戻すことで活性化を図っていく必要があると考えており、取り組んでいきたい』といった都心居住の推進に積極的な意見とともに、『都心居住が促進されることにより、中心部が活性化し、既存都市施設の有効利用が図られると考えられるが、居住は個人の住まい方に対する意識の問題が大きく、同じ費用を要するのであれば自然環境に優れた郊外の戸建て住宅を望む傾向があるように思う。』といった消極的意見もあった。

都心居住の方向性について『都心はもともと都市施設の集積地であり、利便性が高い。高齢社会を迎えることを思えば、利便性の高い土地に北欧に見られるような高齢者共同住宅を建てることに魅力を感じる。』のように、その利便性に着目し、高齢化という社会変化の受け皿と位置づける考え方などが示された。

また、『都心においては、地価が高く、まとまった土地が得られにくい。都心居住は魅力があるが、コストが高く、諸制度が充分でなく活用しづらい。』、『公共交通を含めた中心市街地の再整備が必要であるが、まちづくり事業(ソフト施策)を含め、住民と協働で進めるべく共同化や土地利用転換を図っていきたい。住民のできることと行政がやるべきことの明確化が必要。』といった課題の指摘があった。                                                   以  上

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